【連結決算ここが大変】簿記の連結会計と実務の連結決算との違い③単純合算
今回は単純合算について簿記と実務との違いをお話させていただきます。
連結会計の最初で習う話ですが、大まかにいえば連結財務諸表は以下の流れで作成します。
Ⅰ.親会社及びグループ会社の個別財務諸表の金額を単純合算する。
Ⅱ.Ⅰの金額と連結修正仕訳を合算する。
今回の話はⅠの単純合算の話です。文字通りグループ会社の個別財務諸表の金額を「単純合算」するだけなのですが、個人的に連結決算実務で大変だと感じている業務は以下の順であり、内部取引消去の次に大変な業務です。
1.内部取引消去
2.在外子会社の換算、単純合算
3.個別修正(資産負債の評価差額、退職給付調整など)
----------------------------------------------------------(超えられない壁)
4.棚卸未実現消去
----------------------------------------------------------(超えられない壁)
5.資本連結
6.固定資産未実現消去
7.貸倒引当金の調整
ここから一見簡単な業務に思える単純合算が実務の連結決算で大変な業務になる理由を説明します。
主に以下の通りです。
①個別財務諸表から連結財務諸表への勘定科目体系の変換が煩雑
一般的に連結財務諸表の勘定科目は個別財務諸表の勘定科目をより集約したものとなっております。
例1)個別財務諸表の勘定科目粒度<連結財務諸表の勘定科目粒度の場合
個別財務諸表 | 連結財務諸表 |
利益準備金 | 利益剰余金 |
繰越利益剰余金 | |
任意積立金 |
例1のように個別財務諸表の勘定科目粒度<連結財務諸表の勘定科目粒度となっていれば比較的大きな負担とはならないです。
しかし中には例2のように個別財務諸表の勘定科目粒度>連結財務諸表の勘定科目粒度となる場合があります。
例2)個別財務諸表の勘定科目粒度>連結財務諸表の勘定科目粒度の場合
個別財務諸表 | 連結財務諸表 |
建物 | 建物(取得価額) |
建物(減価償却累計額) | |
建物(減損損失累計額) |
例2の場合、連結財務諸表の金額を個別財務諸表から取得できないため、補助科目元帳や固定資産台帳などの別の資料から金額を確認しなければなりません。これが非常に煩雑な作業となります。
②個別財務諸表と連結財務諸表の勘定科目比較表のメンテナンスが煩雑
連結財務諸表の勘定科目への体系の変換のために一般的に何らかの形で上記の例1のような比較表を作成している企業も多いのではないでしょうか。
しかしなががら新しい取引が発生した、チェックの効率化などの理由で個別財務諸表、連結財務諸表の勘定科目をメンテナンスした場合、この比較表も併せてメンテナンスする必要があります。
この比較表のメンテナンスはある程度会計を分かっている方でないとできない作業です。
さらに個別会計システムのデータを連結会計システムへ連携している企業の場合、それぞれのシステムでも下記のフローで勘定科目系ののマスタメンテナンスをする必要があります。
ⅰ.個別会計システム、連結会計システムで勘定科目を追加
ⅱ.連結会計システムの勘定科目変換マスタ(対比表)のメンテナンス
この作業は個別会計システム及び連結会計システムの操作方法を熟知していないとできないため、煩雑な作業となります。
③各グループ会社の勘定科目が統一されていないことが多い
各グループ会社の勘定科目が統一されていない場合、上記①、②の作業をグループ会社の数だけ行う必要があり、さらに煩雑となります。
これまで様々なお客様の連結決算を見てきましたが、連結決算に苦労している会社ほど各グループ会社の勘定科目が統一できていません。
各グループ会社で統一の勘定科目体系を作成することで連結決算のかなりの工数を削減したケースもありました。
④外国語の勘定科目が分からない
在外子会社の場合、個別財務諸表は外国語で作成されます。
外国語の勘定科目は見慣れないことが多いため連結財務諸表の勘定科目のうちどれに該当するか把握することがより煩雑となる傾向があります。
≪まとめ≫
個別財務諸表の単純合算の効率化に向けては連結決算を考慮して各グループ会社の勘定科目を整備していくことが重要なポイントです。
弊社はグループ会社の勘定科目整備事例を多数経験しておりますため、お悩みのお客様は一度ご相談ください。
次回は個別財務諸表の修正の実務についてお話させていただきます。