【連結決算ここが大変】簿記の連結会計と実務の連結決算との違い④個別修正

今回は個別修正についてお話させていただきます。

個別修正とは単体会計と連結会計で適用される会計基準などの違いなどの理由により各グループ会社の個別財務諸表の金額を修正することであり、例として以下のものがあります。

・単体決算誤りの修正
・新規連結時の資産負債の時価評価
・退職給付債務の未認識数理計算上の差異調整
・子会社株式の取得関連費用調整
・子会社株式評価損の振戻し
・親会社株式の時価評価振戻し
・未達取引
・期ずれ修正
・実務対応報告第18号 「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」による修正(在外子会社修正)

個別修正が実務で大変だと感じている理由は主に以下の通りです。

①単体決算誤りの修正が大変
単体決算の修正とは各グループ会社から個別財務諸表の金額の報告があった後に連結決算上で行う修正のことです。本来単体決算で対応する項目ですが、以下の理由などにより連結決算上で修正する会社があります。

・グループ会社の決算担当者に修正を依頼する負担が大きい。
・グループ会社の確定申告の内容を修正したくない。
・個別会計システムの本締め処理を行ってしまった。
・管理会計上の業績管理のやり方を変えたくない。
(例:商品評価損は本来売上原価であるが、営業利益に影響が出てしまうので特別損失として計上する。)
・個別財務諸表の勘定科目の粒度が粗い。
(例:有形固定資産の表示が直接法になっているので間接法に修正する。)

要するに単体決算の不備のしわ寄せを連結決算で対応している状態です。
連結決算に課題があると認識しているお客様の話をよくよく聞いているとそもそも単体決算に問題あることが原因であるケースは結構多いです。
このような場合は単体決算の改善から行う必要があります。

②未達取引、期ずれ修正が大変
内部取引消去仕訳計上の前に販売側の売上計上のタイミングと購入側の仕入計上のタイミングを合わせる必要があり、このタイミングがずれている場合は未達取引として連結上、修正する必要があります。
未達取引の把握は双方の会社の会計処理の内容を把握する必要があるため非常に煩雑となります。

また親会社と子会社で決算期が異なる場合は子会社は親会社の決算期間に合わせて仮決算を行うまたは異なる決算期間中に発生した重要なグループ会社間の取引を調整(期ずれ修正)する必要があります。
多くの会社では期ずれ修正を選択していますが、該当の期ずれの取引を把握する必要があるため非常に煩雑となります。

グループ会社間で決算期を統一することで期ずれ修正の必要が無くなりますが、以下の懸念点があるため決算期を統一することは慎重に検討すべき事項です。

・決算期を変更する負担がかかる。
・期ずれ会社の決算期間に余裕が減る。
・そもそも法律などの規制で決算期の変更ができない。

③在外子会社修正が大変
在外子会社修正とは現地の会計基準と日本基準との差異を修正することであり、実務対応報告第18号 「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」で以下の項目が該当します。

・のれんの償却
・退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理
・研究開発費の支出時費用処理
・投資不動産の時価評価及び固定資産の再評価
・資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合の組替調整

IFRSまたは米国基準であれば修正項目は上記の項目のみで済みますが、それ以外の会計基準で個別財務諸表が作成されている場合は修正内容を把握するのがかなり煩雑になります。

例として中国では法律で発行が義務付けられている「発票」(領収書に近いもの)に基づいて収益を計上しているケースがあり、収益認識基準で求められている収益とは異なるため修正の必要があります。

在外子会社の場合、現地の経理スキルに課題があることや①、②の修正が複合していることでさらに大変なことになっている会社は少なくないです。

≪まとめ≫
個別修正の効率化に向けては連結決算を見据えた単体決算の体制を整備していくことが重要なポイントです。
弊社は単体・連結決算の体制整備や決算期変更の事例を多数経験しておりますのでお悩みのお客様は一度ご相談ください。
次回は内部取引消去の実務についてお話させていただきます。

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