【連結決算ここが大変】簿記の連結会計と実務の連結決算との違い⑤内部取引消去

今回は内部取引消去について簿記と実務との違いをお話させていただきます。

過去のコラムにて実務で大変だと感じている項目の順番は以下の通りとお話させていただきました。
 1.内部取引消去
 2.在外子会社の換算、単純合算
 3.個別修正(資産負債の評価差額、退職給付調整など)
 ----------------------------------------------------------(超えられない壁)
 4.棚卸未実現消去
 ----------------------------------------------------------(超えられない壁)
 5.資本連結
 6.固定資産未実現消去
 7.貸倒引当金の調整

※関連コラム

【連結決算ここが大変】簿記の連結会計と実務の連結決算との違い①概要

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個人的には上記の通り実務の連結決算で最も大変なのは内部取引消去であると感じています。
連結決算の実務経験がある方の多くは内部取引消去の大変さを痛感しているのではないでしょうか。
内部取引消去が大変な理由は以下の通りです。

①内部取引照合差異の原因調査が大変である。
簿記の連結会計では販売(債権)側の金額と購入(債務)側の金額は一致していることが前提となっていますが、実務の連結決算では両者の金額が一致することは滅多にありません。
この差異のことを内部取引照合(突合)差異といいます。
内部取引照合差異の原因は主に以下の通りです。

・どちらかの会社の会計処理が誤っている。
・そもそも取引先別の金額を適切に把握できていない。
・未達取引、期ずれがある。
・在外子会社での取引金額の換算レートが異なる。

内部取引の照合差異が発生する度に差異の原因調査を行う必要があり、これが非常に煩雑な作業とあります。
具体的には個別会計システムの仕訳帳や販売管理システムの帳票など単体決算資料に遡って調査することになります。
さらに内部取引の照合差異の調査の過程で単体決算の修正が必要なことが発覚し、大きな手戻りとなることもあります。

実務の連結決算では内部取引の照合差異を完全に無くすことまでは求められていませんが、一定の金額までに収める必要があります。
残った差額はどちらかの会社の金額を正として内部取引消去の仕訳を計上します。

②内部取引照合対象の勘定科目パターンがバラバラである。
例1のように販売(債権)側で計上する勘定科目と購入(債務)側で計上する勘定科目と一定の対応関係があれば内部取引の照合差異が発生してもその原因の当たりをつけやすいです。

例1)内部取引照合対象の勘定科目パターンが適切に整備されている場合※色付きが照合差異が発生している内部取引

照合パターン 販売(債権)側
の勘定科目
金額 購入(債務)側
の勘定科目
金額
売上債権債務① 売掛金 100 買掛金 100
売上債権債務② 受取手形 300 支払手形 300
営業債権債務 未収入金 400 未払金 350
金銭債権債務 長期貸付金 800 長期借入金 800
商品販売取引 売上高 500 売上原価 450
利息取引 受取利息 200 支払利息 200

このような場合は差異が発生している「営業債権債務」と「商品販売取引」に関連する仕訳のみを対象として差異の原因を調査ができます。

しかしながら例2のように販売(債権)側で計上する勘定科目と購入(債務)側で計上する勘定科目の対応関係がバラバラであると内部取引の照合差異の原因の調査が大変になります。

例2)内部取引照合対象の勘定科目パターンがバラバラの場合※色付きが照合差異が発生している内部取引

照合パターン 販売(債権)側
の勘定科目
金額 購入(債務)側
の勘定科目
金額
流動資産負債 売掛金 500 買掛金 100
未収入金 400 未払金 600
    未払費用 100
損益取引 売上高 800 売上原価 400
雑収入 100 支払手数料 300
    賃借料 300

このような場合は例1よりも広い範囲の取引を調査する必要があり、照合差異の原因究明に時間がかかります。
例2のような会社となる原因の多くは各グループ会社での単体決算で会計処理が整理されていないことであるため、グループ会社の単体決算の会計処理を整理することを推奨しています。

③在外子会社との内部取引照合が大変である。
例3のように在外子会社の内部取引の照合差異の調整は換算レートの関係からさらに煩雑となります。
例3)購入(債務)側が在外子会社の場合の内部取引照合

照合パターン 販売(債権)側
の勘定科目
金額 購入(債務)側
の勘定科目
金額
商品販売取引 売上高 500(円) 売上原価 4(ドル)
利息取引 受取利息 300(円) 支払利息 3(ドル)

グループ会社間の損益取引は取引日レート(HR)で換算するのが原則ですが、実務の連結決算では取引数の多さから取引日レート(HR)で換算するのは現実的ではありません。

そのため、期中平均レート(AR)で換算する場合がほとんどですが、期中平均レート(AR)で換算してしまうと内部取引の照合差異の原因がそもそものグループ会社間の取引金額の認識誤りであるのか、それとも換算レートの違いであるのか調査するのが非常に煩雑となります。

これらの理由により実務では在外子会社との取引金額の重要性が低い場合は内部取引照合を実施せずに親会社や販売側で認識している取引金額のみで内部取引消去仕訳を計上している会社もあります。

≪まとめ≫
上記のように多くの会社では内部取引照合に非常に苦労しており、その原因の大部分は単体決算にあります。
そのため内部取引照合の効率化のために単体決算の運用見直しが必須となります。

弊社は内部取引照合効率化の事例を多数経験しておりますのでお悩みのお客様は一度ご相談ください。
次回は棚卸資産未実現についてお話させていただきます。

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